建設業許可の申請

公共事業における「建設工事」と「役務」の違いは?

公共事業では、「建設工事」や「役務」といった事業の種類があります。建設工事と役務はともに建設業者が行うことができますが、両者の違いをしっかり理解している方は少ないのではなないでしょうか。

そこで今回は、両者の定義や違いについて解説します。

建設工事と役務の定義

建設工事と役務それぞれの定義についてご紹介します。建設工事の定義は建設業法によって決められています。

公共事業とは

官公庁の契約を種類別に見ると、「工事」「役務」「賃貸借」「物品購入」の4種類に分けることができます。

経済産業省の資料によると、それぞれの特徴は以下の通りです。

工事

工事は建設工事などのことを言います。

建設工事は建設業法により規定されているものを指し、工事全般を担う一式工事、工事の一部を担う専門工事に分けられます。

後述するように、工事に該当するように見える事業も「役務」に分類されることがあります。

役務

法人が事業として行っているもののうち、主に以下のような事業が役務に分類されます。

  • 機器、施設の保守、修理、維持管理に関するもの
  • 業務の管理運営に関するもの
  • 物品等の運送(配送等も含む)や保管に関するもの
  • 調査や研究、測量、観測に関するもの
  • コンピューターや通信等のサービスに関するもの
  • 荷役や印刷、清掃に関するもの
  • その他、「物品」・「工事」のいずれにも該当しないもの

このように、役務に該当する事業は非常に広範囲です。

賃貸借

賃貸借はその名の通り、賃貸借契約を行う事業が該当します。土地や物件の賃貸、その他のリース契約などはこれらに該当します。

物品購入

様々な物品の購入はこれに該当します。例えば以下の物品を購入した場合、物品購入と見なされます。

  • 衣類
  • ゴム
  • 皮革
  • プラスチック製品類
  • 窯業・土石製品類
  • 非鉄金属・金属製品類
  • フォーム印刷
  • 図書類
  • 電子出版物類
  • 紙・紙加工品類
  • 車両類・その他輸送・搬送機械器具類
  • 船舶類
  • 燃料類
  • 家具・什器類
  • 一般・産業用機器類
  • 電気・通信用機器類
  • 電子計算機類
  • 精密機器類
  • 医療用機器類
  • 事務用機器類
  • その他機器類
  • 医薬品・医療用品類
  • 事務用品類
  • 土木・建設・建築材料
  • 警察用装備品類
  • 防衛用装備品類

以上のように、官公庁は主に4種類の契約種別があると見ることができます。

建設工事とは

建設工事の定義は、建設業法第2条により規定されています。

同法によると、建設工事は土木工事に関するものであり、建設業者が請け負うとされています。

また、建設業法の別表第1には建設工事として該当する工事の種類が明記されています。具体的には、以下の29種類の工事が建設工事となります。

工事の種類事業名
土木一式工事土木工事業
建築一式工事建築工事業
大工工事大工工事業
左官工事左官工事業
とび・土工・コンクリート工事とび・土工工事業
石工事石工事業
屋根工事屋根工事業
電気工事電気工事業
管工事管工事業
タイル・れんが・ブロック工事タイル・れんが・ブロック工事業
鋼構造物工事鋼構造物工事業
鉄筋工事鉄筋工事業
舗装工事舗装工事業
しゆんせつ工事しゆんせつ工事業
板金工事板金工事業
ガラス工事ガラス工事業
塗装工事塗装工事業
防水工事防水工事業
内装仕上工事内装仕上工事業
機械器具設置工事機械器具設置工事業
熱絶縁工事熱絶縁工事業
電気通信工事電気通信工事業
造園工事造園工事業
さく井工事さく井工事業
建具工事建具工事業
水道施設工事水道施設工事業
消防施設工事消防施設工事業
清掃施設工事清掃施設工事業
解体工事解体工事業

建設工事と役務の違い

建設工事と役務でなかなか見分けが付かない事業も存在します。大規模な建設工事の場合は特別な許可が必要で、審査のプロセスも複雑になります。これらの違いをしっかり理解しておきましょう。

間違われることが多い「役務」

役務は一見すると建設業とは関係ない業務が多いため、建設業関連の業務は全て「建設工事」に該当するように思えます。

しかし、実際は建設業に関連する仕事であっても建設工事ではなく役務に該当する仕事が多数存在します。例えば以下の業務は建設工事ではなく役務として扱われます。

  • 建物の設計や製図、建設のコンサルタント
  • ボーリング調査や測量
  • 地質調査等

これらは建設工事に関連するものであっても、役務となります。ただし、建設工事の契約の中にこれらの業務が含まれている場合は、これらのみを単独で役務として区別することはありません。

建設工事と役務の審査における違い

役務に該当する事業の競争入札は、ある省で入札参加資格が認められると、他の府省庁でもその資格が有効とれます。

一方で、建設工事に伴う入札参加資格は、府省庁ごとに個別で判断されます。また、建設業者が建設工事の仕事を受注する際は審査の対象となります。

審査では事業を受注する会社の経営状況や経営規模、人材などについて厳しい審査を受ける必要があります。

このように、同じ建設業関連の仕事であっても、役務と建設工事では審査や手続きに大きな差があるのです。

建設業許可を受けるメリット

役務と建設工事の違いについて理解し、自社が行う事業で建設業許可が必要だと感じたら、取得に向けて検討してみましょう。建設業許可を受けると、以下に紹介する様々なメリットが得られます。

建設業許可を取得することで信頼性がアップする

建設業許可の取得にはそれなりに高いハードルを越える必要があります。審査を通過する条件として、人材の確保や社内の財政状況など厳しい条件が課せられているからです。

許可を取得すると、取引先に技術面や人材、財政力があることを証明することができます。許可を取得することで社会的な信頼性を得られるのは大きなメリットです。

大規模な工事ができる

建設業許可の一番の目的は、大規模な工事が可能になることです。

建設業許可を取得していなくても行える、いわゆる「軽微な工事」とは、具体的に以下の工事のことです。

①建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事

・「木造」…建築基準法第2条第5号に定める主要構造部が木造であるもの

・「住宅」…住宅、共同住宅及び店舗等との併用住宅で、延べ面積が2分の1以上を居住の用に供するもの

②建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事

つまり、建設業許可がないとこれ以上の規模の工事を行うことはできないのです。

許可を取るとより大規模な工事を受注することができるようになり、売上アップに繋がります。

融資機関からの評価が上がる

建設業許可を取得すると、会社の技術面・人材面・経営面の信頼性がアップし、営業する際に競合他社よりも有利になります。

大規模な工事を受注することが可能になると、公共工事も視野に入れられるようになり、会社の成長性も期待できます。

このような背景から、融資期間の評価が向上することが考えられます。

建設業許可を取得するために求められる要件には、事業に一定以上の経験年数を有する人材の確保や、500万円以上の財産的基礎があることなどが求められています。

この条件を満たしていると証明できると、融資機関も融資の材料として好印象を持つでしょう。

建設業許可の取得はあらかじめ準備を

建設業許可を取得するにはある程度時間と手間が必要です。

自治体の対応や書類の内容にもよりますが、必要書類を提出してから許可まで、知事許可でおおむね30日、大臣許可でおおむね120日必要です。

建設業許可の申請書類は添付書類も多く、はじめての申請では戸惑うことも多いかもしれません。また、会社の申請に関する知識がある人材を持たない場合、思いのほか手続きに時間がかかる可能性もあります。

申請のタイミングや必要書類について知りたい方は、ぜひ一度建設業許可取得の実績が豊富な行政書士に相談してみましょう。

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