建設業許可の申請

建設業許可申請前や許可取得後に専任技術者注意すべきこと

建設業許可を取得するためには、事業者が専任技術者を設置する必要があります。専任技術者は資格要件が厳しく、一定の実務経験を積んだ者でなければ資格が認められません。

専任技術者は申請時に設置する義務があることはもちろんのこと、許可取得後も注意すべき点がいくつかあります。

そこで今回は、建設業許可申請前や許可取得後で、専任技術者に関して注意すべき点について解説していきます。

建設業許可申請前に専任技術者に関して確認すべき点

まずは、建設業許可申請前に専任技術者に関して確認すべき点について知っておきましょう。特に資格要件については複雑で見落としがちなので、しっかり理解しておきましょう。

一般建設業許可における専任技術者になるための条件

一般建設業の許可取得を目指す場合は、必要となる建設業種を確認し、それぞれの要件をチェックする必要があります。

一般建設業許可は以下の工事になります。

  • 土木一式工事業
  • 建築一式工事業
  • 大工工事業
  • 左官工事業
  • とび・土工工事業
  • 石工事業
  • 屋根工事業
  • 電気工事業
  • 管工事業
  • タイル・レンガ・ブロック工事業
  • 鋼構造物工事業
  • 鉄筋工事業
  • 舗装工事業
  • しゅんせつ工事業
  • 板金工事業
  • ガラス工事業
  • 塗装工事業
  • 防水工事業
  • 内装仕上工事業
  • 機械器具設置工事業
  • 熱絶縁工事業
  • 電気通信工事業
  • 造園工事業
  • さく井工事業
  • 建具工事業
  • 水道施設工事業
  • 消防施設工事業
  • 清掃施設工事業

これらはそれぞれ細かく資格要件が設定されています。例えば、土木一式工事では以下の3つのいずれかの要件を満たす必要があるとされています。

①以下のいずれかの資格を持っていること

  • 1級建設機械施工技士
  • 2級建設機械施工技士(第一種から第六種)
  • 1級土木施工管理技士
  • 2級土木施工管理技士(土木)
  • 技術士試験 建設・総合技術監理(建設)
  • 技術士試験 建設「鋼構造物及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」)
  • 技術士試験 農業「農業土木」・総合技術監理
  • 技術士試験 水産「水産土木」・総合技術監理
  • 技術士試験 森林「森林土木」・総合技術監理

②関連学科卒業の学歴が有り、かつ一定の実務経験があること

  • 土木工学
  • 都市工学
  • 衛生工学
  • 交通工学

③土木一式工事に関する10年以上の実務経験があること

他の工事に関する細かな情報は、それぞれの都道府県庁ホームページなどでご確認ください。

特定建設業許可における専任技術者になるための条件

一般建設業許可と同様に、特定建設業許可でも専任技術者になるための要件が細かく指定されています。

例えば、土木一式工事の場合、以下の要件をクリアする必要があります。

  • 1級建設機械施工技士
  • 1級土木施工管理技士
  • 技術士試験 建設・総合技術監理(建設)
  • 技術士試験 建設「鋼構造物及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」)
  • 技術士試験 農業「農業土木」・総合技術監理
  • 技術士試験 水産「水産土木」・総合技術監理
  • 技術士試験 森林「森林土木」・総合技術監理

土木一式工事の場合は、学歴や実務経験だけでは要件をクリアすることはできません。このように、同じ工事であっても一般建設業と特定建設業では資格要件が異なりますので、注意しましょう。

建設業許可取得後の専任技術者が注意すべき点

建設業許可は一度取得したら終わりというわけではなく、更新までの5年間は許可を維持し続ける必要があります。許可を取り消されないために専任技術者が注意すべき点について解説します。

専任技術者が現場に出る際の注意点

建設業許可を取得すると請負額の上限がなくなり、大きな工事を受注できるようになります。具体的には、500万円以上の請負が出来なかったものが、許可取得後は受注出来ることになります。大きな工事を請け負うことができるようになるため、仕事の幅も広がり売上も向上することが期待できるでしょう

一方で、大きな工事を受注する場合、専任技術者には特定の制限がかけられます。専任技術者は営業所に専任として従事しなければならないため、通常時は営業所に在籍し、契約等について専門知識を有する者として仕事をすることになります。

しかし、一人取締役会社(一人社長)などの場合、社長が専任技術者や現場作業員を兼ねていることが多々あります。建設業界では一人で現場から責任者まで全てを一人でこなす事業者は珍しくなく、このような業態を取っている会社も建設業許可を取得すれば大規模工事の受注が可能です。

しかし、専任技術者は営業所に専任として従事しなければならないため、営業所に張り付いて現場に出られなければ建設業許可を取得しても意味を持ちません。 

そこで、原則は現場に出ることができない専任技術者であっても例外として現場に出てよいと認められるケースがあるのです。

専任技術者が現場に出て良いケースは、以下のすべての要件を満たす必要があります。

①請負額が3,500万円(税込)未満であり、現場の専任性が求められていない工事であること

②専任技術者所属の営業所で契約した工事であること

③専任技術者の職務を遂行できる近接の工事現場であること

④所属の営業所と常時連絡が取れること状態であること

通常であれば、②と④についてはそれほど問題になることはないでしょう。専任技術者が所属している営業所で工事を契約することは通常の流れであり、ほとんどの会社は各営業所と常時連絡を取ることができるはずです。

一方で、①と③に関しては注意が必要です。専任技術者の専任の例外が認められるケースは、3,500万円未満の工事であり、かつ、現場に専任性が求められない工事に限ります。この金額よりも大きな工事であったり、少額でも現場に専任性が求めらえる工事の場合、専任技術者が現場に出ていくことは認められません。

また、③に関しては、専任技術者が本来従事すべき営業所で仕事ができるよう、近接の工事現場であることが求められています。営業所から離れたところで工事がある場合、専任技術者が長時間現場に出ることになるため、認められません。

3,500万円以上の工事には主任技術者が必要

工事の契約金額が3,500万円を超える場合には注意が必要です。

3,500万円を超える大きな工事を受注した場合、その現場では専任の「主任技術者」を置く必要が出てきます。

元請など、建設工事のケースによっては、さらに厳しい条件の「監理技術者」を置く必要がある場合がありますが、ほとんどの建設業者さんは下請工事と想定されるため、主任技術者を前提にします。 

専任の主任技術者は現場に専任となるため、工事を行っている間は他の現場の掛け持ちは認められません。 

建設業許可を取得するまではこれらの専任性に関する条件は気にせず工事を進めていたかもしれませんが、建設業許可を取得すると請負金額の制限がなくなる代わりに、専任の責任者に関するルールが課されることになります。

これらのルールを破ってしまうと、建設業法違反となり許可が取り消される可能性もあります。建設業許可は取得後も維持するために条件を満たし続ける必要があることを理解し、建設業法で定められたルールをしっかりと守るようにしましょう。

建設業許可の取得後も行政書士に相談可能

建設業許可に関する申請やその後の変更、更新などは、行政書士に相談すると対応してくれます。建設業許可申請の経験豊富な行政書士であれば、許可の取得だけでなく、その後の手続きや守るべきルールについてもトータルでサポートしてくれます。

建設業許可の申請や維持に関する不安は、行政書士にサポートしてもらいながら進めると良いでしょう。

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