建設業許可は、大規模な建設工事を行う際に行政から取得することが必要な許可です。建設業許可は許可の要件がそれぞれの建設工事ごとに分かれており、必要な資格や人材、財務条件が異なります。
今回は、建設工事の中でも新しく設けられた解体工事の建設業許可条件についてご紹介します。
解体工事の定義
解体工事とは、工作物の解体を行う工事のことを言い、具体的には建築物を壊して更地にする工事のことを指しています。
平成28年6月1日の改正建設業法施行日から、建設業許可に関する業種区分として、新たに「解体工事業」が追加されました。これにより、従来の建設業法で「とび・土工工事業」に含まれていた「工作物の解体」は「解体工事業」として独立することになったため、注意が必要です。
なお、各専門工事で建設された建築物自体をそれのみ解体する工事は、各専門工事として取扱われ、解体工事には該当しません。
総合的な企画や指導、調整によって土木工作物や建築物を解体する工事については、『土木一式工事』や『建築一式工事』として取扱われます。
解体工事には含まれない工事の例
例えば、元請会社がアパートを解体して更地にし、新しくアパートを建設する工事は建築一式工事となり、解体工事ではありません。
また、電気工事によって電柱の解体をする工事は、電気工事業の工事と見なされます。
解体工事における経営業務管理責任者の要件
建設業許可における解体工事の経営業務管理責任者としては、法人であれば常勤役員のうち1人、個人事業主の場合は本人か支配人のうち1人が、下記の4つの要件のいずれかを満たす必要があります。
- 解体工事業を営む会社で5年以上の役員経験がある者
- 個人事業主として5年以上の解体工事経験がある者
- 解体工事業以外の建設会社で5年以上の役員経験がある者
- 解体工事業以外の建設業で5年以上個人事業主の経験がある者
- 平成28年5月1日以前にとび・土工工事業について5年以上の役員経験又は個人事業主としての経験がある者
以下では、最初の4つについて詳しく解説していきます。
解体工事業を営む会社で5年以上の役員経験がある者
1つ目の要件としては、建設業許可を取得している建設会社であれば、建設業許可通知書のコピーと役員期間(5年以上)が明記されている登記簿謄本(履歴事項全部証明書)などがあれば証明書として提出することができます。
建設業許可を保有してない会社に所属していた場合、工事請負契契約書や注文書、請求書等などで建設業だとわかることを証明しなければなりません。また、役員期間の記載されている登記簿謄本(履歴事項全部証明書)で証明することもできます。
複数の会社に所属しており、それらの役員期間を合算する場合であっても、上記の証明書で証明可能です。
個人事業主として5年以上の解体工事経験がある者
2つ目の要件としては、個人事業主として5年以上の解体工事経験がある者という要件があります。
解体工事の経験があることを証明するためには、工事請負契契約書や注文書、請求書等と確定申告書の原本提示(5年以上)などによって証明することができます。
解体工事業以外の建設会社で5年以上の役員経験がある者
3つ目の要件は、解体工事業の経験はないものの、その他の建設業で5年以上の役員経験がある者です。
建設業許可を持っている建設会社の場合は、建設業許可通知書のコピーと役員期間(5年以上)のが確認できる登記簿謄本(履歴事項全部証明書)等で証明することができます。
建設業許可を取得していない会社の場合は、工事請負契契約書や注文書、請求書等と役員期間(5年以上)登記簿謄本(履歴事項全部証明書)等で証明することができます。
複数の会社、複数の業種での役員期間の合算であっても、上記の書類で証明可能です。
解体工事業以外の建設業で5年以上個人事業主の経験がある者
4つ目の要件は、解体工事事業以外の建設業で5年以上個人事業主の経験がある者となっています。
工事請負契契約書、注文書、請求書等と確定申告書の原本提示によって経験年数などを証明します。
解体工事業で求められる専任技術者の要件とは
次に、建設業許可における解体工事業での専任技術者の要件を確認しておきましょう。専任技術者の要件は、一般建設業と特定建設業によって内容が異なります。
一般建設業で必要な専任技術者の要件
一般建設業で必要な専任技術者の要件としては、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 解体工事の実務経験が10年以上ある
- 土木工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関して8年以上の実務経験を有する者
- 建築工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関して8年以上の実務経験を有する者
- とび・土工工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関して8年以上の実務経験を有する者
- 指定学科(建築学、土木工学)を卒業し、かつ、解体工事の実務経験がある者
- 指定の国家資格を持つ者
1つ目の要件としては、建設業許可を取得済みの会社での経験であれば、建設業許可通知書のコピー、厚生年金被保険者記録照会回答表などを用意すれば証明できます。
建設業許可を保有してない会社で積んだ経験の場合、解体工事の経験だとわかる工事請負契契約書や注文書、請求書等と厚生年金被保険者記録照会回答表などを添付して証明することになります。
5つ目の要件としては、中等・高校・専修学校の場合は5年以上、高等専門学校か大学の場合は3年以上の実務経験がなければなりません。
建設業許可を取得している会社での経験であれば、卒業証明書と建設業許可通知書のコピー、さらに厚生年金被保険者記録照会回答表などを提出すれば証明可能です。
建設業許可を取得していない会社での経験の場合は、卒業証明書と電機通信工事と明確にわかる工事請負契契約書、注文書、請求書等と厚生年金被保険者記録照会回答表などで証明することになります。
6つ目の条件である国家資格に関しては、以下の国家資格保有者が該当します。
- 一級土木施工管理技士
- 二級土木施工管理技士(土木)
- 一級建築施工管理技士
- 二級建築施工管理技士(建築又は躯体)
- 技術士法の建設・総合技術監理(建設)
- 建設リサイクル法の解体工事施工技士
- 職業能力開発促進法のとび技能士(二級保持者は3年以上の実務経験が必須)
特定建設業で必要な専任技術者の要件
特定建設業で必要な専任技術者の要件は、下記の3つの要件のうちいずれかを満たす必要があります。
- 一般建設業の要件1か2のいずれかに該当する者であり、元請として4,500万円以上(消費税込)の工事に監視て2年以上指導監督的な実務経験を有する人
- 特定の国家資格を有する者
- 国土交通大臣が、1・2に掲げる人と同等以上の能力を有すると認めた者
要件1に関しては、建設業許可通知書のコピーと工事請負契契約書、注文書、請求書などで証明する必要があります。
また、要件2に関しては、一級土木施工管理技士、一級建築施工管理技士、技術士法の建設・総合技術監理(建設)を有する者が該当します。
要件3に関しては、以前実施されていた特別認定講習や考査の合格者が要件に該当していましたが、現在は実施されていないため、実質的に上記の1か2で要件を満たす必要があります。