建設業許可の申請

一人親方(個人事業主)のまま建設業許可の取得は可能?条件や必要書類を解説!

建設業の場合、一人親方(個人事業主)のまま建設業許可を取得したいと考えている方も多いようです。一人親方が建設業許可の申請をする場合、法人とどのような違いがあるのでしょうか。

今回は、一人親方が建設業許可を申請するメリット・デメリットや注意点、必要書類を詳しく解説していきます。

一人親方として建設業許可を受ける際の条件

一人親方とは、労働者(従業員)を一切雇用しない、あるいは労働者を使用したとしても 年間100日以内の使用に限定している建設業事業者のことを指します。

一人親方として建設業許可を受けることは可能ですが、一定の条件を満たす必要があります。

建設業許可の種類を決める

まずは建設業許可の種類を決めましょう。建設業許可には、国土交通大臣の許可と知事許可の2種類があります。

国土交通大臣許可は2つ以上の都道府県に建設営業所がある場合に該当します。一方、知事許可は、1つの都道府県にのみ営業所がある場合に申請を行います。

  1. 経営業務の管理責任者が常勤でいること。
  2. 専任技術者を営業所ごとに常勤で置いていること。
  3. 請負契約に関して誠実性を有していること。
  4. 請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有していること。
  5. 欠格要件に該当しないこと。
  6. 営業所の各種要件に該当すること

営業所の各種要件とは、建設工事の契約見積りや請負契約締結等の実体的な事業を行っていることや、最低限の設備が用意されていることなどがあげられます。

特に、建設業許可では審査の際に健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険等の加入状況がチェックされ、一人親方の増加を抑制する傾向が見られます。

一方で、建設業の業務を行う親方の元で修行し、個人で独立した一人親方も多く存在するのが現状です。

一人親方のまま建設業許可申請をするメリット

一人親方のまま建設業許可の申請を行うことは、以下のようなメリットが考えられます。

500万円以上の工事を受注できる

建設業許可を取得すると、これまで受注できなかった500万円以上の工事や公共工事の受注が可能になります。

個人事業主が500万円以上の大きな工事を受注することができるようになると、売上の向上などに大きく貢献できます。

許可申請時の書類が法人に比べて少ない

建設業許可の申請書類は、管轄する役所のホームページからダウンロードします。

建設業許可は一般的に書類が多く、収集にも時間がかかるため煩雑な業務です。建設業許可は多くが法人としての申請になりますが、法人の申請には独自に書類が必要になってきます。

一方、法人成りする予定がない個人事業主の場合、申請の際に用意する書類が法人よりも少なく済みます。

そのため、個人で書類を集めて作成しなければならないとしても比較的短時間での申請・取得が可能です。

元請会社や顧客からの信用を得ることができる

一人親方の場合、元受け会社や顧客である施主からの信頼を得ることは事業を行う上で何より重要です。

一人親方は建設業許可を取得せず小規模な工事のみを受注するケースも多いため、許可を取得しているだけで競合と差別化することができ、一定の信頼を得ることができます。

一人親方のまま建設業許可申請をするデメリット

一人親方のまま建設業許可を申請する際は以下のデメリットに気を付ける必要があります。

法人成りする場合新たに許可を取得する必要がある

建設業許可を取得後も一人親方として個人事業主のまま事業を行う場合は問題ありませんが、その後法人成りをする場合は新たに法人として許可を得る必要があります。

そのため、近いうちに法人成りすることを検討している場合は、法人になってから許可を取得しても良いかもしれません。

建設業許可の引き継ぎは難しい

法人の場合、建設業許可は法人として取得しているため、担当者や代表などの地位に変更があっても許可自体は保有し続けることができます。

一方、個人事業主の場合、本人が死亡すると許可を他者に引き継ぐことは難しいというデメリットがあります。

一人親方では人材を集めることが難しい場合も

一人親方として工事や公共工事を受注していると、法人に比べて保障面で見劣りしてしまうことがあります。

特に、社会保険の整備や就業規則の面などから、労働者側は法人を選ぶことが多く、人材を集めるのに苦労する場合があります。

一人親方のまま建設業許可を取得するには専任技術者になることが必要

建設業許可を取得するには、該当の申請許可業種の要件を満たす専任技術者を配置する必要があります。

この専任技術者は一般建設業と特定建設業で異なります。

一般建設業とは、建設工事の発注者から直接請け負う元請けとして事業を行い、請け負った一件の工事の全部又は一部を下請けに出す際の下請代金が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)未満である場合、あるいは下請けとしてのみ事業を行う場合に該当します。

特定建設業とは、建設工事の発注者から直接請け負う元請けとして事業を行い、請け負った一件の工事の全部又は一部を下請けに出す際の下請代金が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の場合に該当します。

一般建設業の場合の必要書類

一般建設業の場合、以下の3つのいずれかに該当する必要があります。

1.許可を受けようとする業種に関して、高校(旧実業高校を含む)指定学科卒業後、5年以上大学(高等専門学校・旧専門学校を含む)指定学科卒業後、3年以上の実務経験を有する者

この要件に該当する場合、証明書として卒業証明書と実務経験期間分の工事請負契約書、注文書、請求書などを揃える必要があります。請求書を提出する場合は、入金を証明する通帳も必要になります。

2.学歴・資格の有無を問わず、許可を受けようとする業種に関して10年以上の実務経験を有する者

この要件は業種に関する学歴や資格は問いませんが、実務経験の証明が必要です。要件に該当することを証明するには、実務経験期間分(10年以上)の工事請負契約書や注文書、請求書などの書類を提出し、過去の実績を証明しなければなりません。

また、請求書の場合は、受注による入金を証明する通帳のコピーなども提出する必要があります。

3.受けたい許可に関する業種に定められた国家資格等

例えば、二級建築士などの国家資格が必要な業種では、これらを有していることを証明しなければなりません。

各資格の合格証明書などを原本提示する必要があるため、あらかじめ用意しておきましょう。

特定建設業の場合の必要書類

特定建設業の場合、以下の3つのいずれかに該当する必要があります。

1.許可を受けたい業種に関する国家資格等

例えば、業種によっては一級建築施工管理技士などの資格が求められます。証明するには各資格の合格証明書などを原本提示する必要があるため、あらかじめ用意しておきましょう。

2.一般建設業の3つの要件のいずれかに該当し、かつ元請として4,500万円以上(消費税込)の工事で2年以上指導監督的な実務経験を有する者

この要件では一般建設業としての要件と指揮監督の実務経験両方を証明する必要があります。実務経験の証明としては、実務経験期間分の工事請負契約書を原本提示することが必要です。

3.国土交通大臣が特定建設業の上記2要件と同等以上の能力があると認めた者

この要件は、以前に実施されていた特別認定講習及び考査の合格者が対象となっています。現在は実施されていませんので、特定建設業の要件は実質上記の2つとなっています。

一人親方の財産要件の証明には注意が必要

建設業許可を取得するには、専任技術者としての要件だけでなく、その他にも様々な要件を満たす必要があります。

中でもクリアできないケースが目立つのは、財産的基礎(財産要件)です。こちらも要件を満たしていることを書類で証明する必要があります。

具体的には、財産要件を満たしていることを証明する書類は以下の通りです。

一般建設業の場合、500万円以上の自己資本あるいはキャッシュがあることを証明できないと、許可は取得できません。

財務諸表中に自己資本が500万円以上あることが確認できれば問題なく審査を通過することが考えられますが、500万円未満であった場合は、銀行の残高証明書によって500万円以上の現金があることを証明しなければなりません。

一人親方の個人事業主でも人を雇用しているケースがありますが、この場合給与などの支払いを先に行っていることが多く、財産要件をクリアできない場合もあるのです。

銀行の残高証明書を利用する際は、許可申請の受付日から1か月以内に取得したものを提出しなければなりません。そのため、申請のタイミングで残高証明書を取得する必要があります。

建設業許可を申請するその他の要件

建設業許可を申請する際は、経営業務の管理責任者、専任技術者が必要であるといった人的要件のほかに、以下の要件を満たさなければなりません。

  • 財産的要件(一般建設業では自己資本500万円以上あることが要件)
  • 営業所要件(独立した営業所であることが要件)
  • 欠格要件に該当しないこと

一人親方の場合、人的要件が最も高いハードルとなりますが、これらの要件にも気を付ける必要があるのです。

人的要件の証明書は当該期間分の確定申告書や工事請負契約書、注文書、請求書などが必要で、請求書の場合は、入金を証明する通帳なども用意しなければなりません。

申請先は役所の担当部署となり、原則書面による審査となっています。

どれほど経験や実績があっても書面を用意できなければ許可は取得できません。申請前にどれだけ書類を手元に残しておくかが申請をスムーズに行うカギとなります。

現在、一人親方の個人事業主として活動されている方は、この先すぐに建設業許可を取得する予定がないとしても、確定申告書や各種証明書の原本、工事請負契約書、注文書などは廃棄せず必ず保管しておくようにしましょう。

また、証明書の収集や資料の作成で迷ったら、建設業許可取得について経験豊富な行政書士に依頼すると良いでしょう。行政書士であれば資料の収集・代行をしてくれるだけでなく、一人親方として許可取得後も事業を進める上での注意点など、プロの視点から適切なアドバイスを受けることができます。

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