建設業法では請け負った工事の下請への丸投げを「一括下請負」といい、建設業法では禁止されています。今回は「一括下請負」をしたり、下請の立場で「一括下請負」を引き受けることがないようにその内容を解説していきます。
一括下請負は原則として禁止されています
一括下請負が認められると以下のようなことが起こると考えられるため、建設業法では原則として一括下請負を禁止しています。
- 発注者は、施工実績、施工能力、経営管理能力、資力、社会的信用等様々な角度から建設業者を評価し、信頼して発注しているため、それを裏切ることとなる。
- 中間搾取、工事の質の低下、労働条件の悪化、実際の工事施工の責任の不明確化等が発生する
- 施工能力のない商業ブローカー的不良建設業者の輩出を招く
一括下請負とは、元請負人が下請負人の施工に「実質的に関与」することなく、次のいずれかに該当することをいいます。
- 請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
- 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
一括して他の業者に請け負わせることも、他の業者から一括して請け負うこともどちらも禁止されています。元請業者・一次下請負業者間はもちろんのこと、一次下請業者・二次下請業者間、それ以下の下請業者間でも一括下請負は禁止です。
全ての請負契約の当事者間で一括下請は原則禁止
一括下請負は、公共工事においては全面禁止です。民間工事においては、共同住宅を新築する建設工事については禁止で、それ以外は事前に発注者の書面による承諾を得た場合に一括下請負をすることができます。発注者の書面による承諾とは、建設工事の最初の注文者である発注者の承諾です。あくまでも発注者の承諾によるもので、元請負人が承諾しても認められるものではありませんのでご注意ください。
発注者の書面による承諾が必要
「実質的に関与」とは?
「実質的に関与」とは、元請負人が自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導を行うことをいいます。
具体的には、次の表において元請、下請それぞれが果たすべき役割を果たすことが必要となります。
一括下請負の判断基準
この表からもわかる通り、単に工事現場に主任技術者・監理技術者を配置しているだけでは、「実質的に関与」しているとは言えませんのでご注意ください。
一括下請負の例
一括下請負に該当するか否かの判断は、元請負人が請け負った建設工事1件(請負契約単位)ごとに行われます。
請け負った建設工事をすべて丸投げするケースは、一括下請負に該当することが明確ですが、次のように丸投げではなく、部分的に請け負わせるケースでも一括下請負になりますのでご注意ください。
- 住宅の建設工事(建設一式工事)を請け負った元請負人が、自らは内装仕上工事のみを行い、その他全ての工事を下請負人に請け負わせる場合
- 外壁塗装工事を請け負った元請負人が、自らは足場工事のみを行い、塗装工事を下請負人に請け負わせる場合
- 戸建分譲住宅6戸の新築工事を請け負った元請負人が、そのうちの1戸を下請負人に請け負わせる場合
1.2.のように附帯工事のみを元請負人が行い本体工事を下請負人に請け負わせるようなケースや、3.のように元請負人が請け負った建設工事の一部であって他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工作物の建設工事を一括して下請負人に請け負わせるようなケースは一括下請負になりますのでご注意ください。