令和2年施工改正建設業法に定められる「適切な社会保険の加入義務」
建設業においては、社会保険等の法定福利費を適正に負担しない保険未加入企業が存在し、若年就労者減少の原因の一つになっている他、関係法令を遵守して適正に法定福利費を負担する事業者ほど競合事業者との競争上不利になるという望ましくない状況が生じていたため、国土交通省では、社会保険未加入の事業者への対策が進められてきていました。建設業者の社会保険加入率100%を目標として、これまで社会保険未加入対策として様々な取り組みがおこなわれてきたおかげて、建設業における社会保険加入率は年々上がってきました。しかし、それでも100%とは至らず、数%程度の社会保険未加入建設業者はなくなりません。
そこで、令和2年10月に施行された改正建設業において「適切な社会保険の加入」を建設業者の義務とする抜本的な対策が行われました。すべての建設業を営む建設業許可の申請の際に、適切な社会保険に加入されていることが確認されます。建設業で求められる社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つです。これらの保険について法律上加入義務があるのに、加入していない場合、建設業許可の申請ができません。
適切な社会保険とは?
事業所の形態(法人や個人)、常用の労働者数、就労形態によって加入すべき社会保険が異なりますのでよくご確認ください。
社会保険加入に関する下請指導ガイドライン
国土交通省が定めた「社会保険加入に関する下請指導ガイドライン」とは、建設業における社会保険の加入について、元請及び下請がそれぞれ負うべき役割と責任を明確にしたものです。このガイドラインに定められている元請・下請のそれぞれの役割と責任の概要は以下の通りです。
元請の役割と責任
- 下請について保険加入の確認・指導
- 選定の候補となる建設業者について社会保険の加入状況を確認し、未加入である場合には、早期に加入手続きをすすめるよう指導する。
- 社会保険の全部又は一部に適用除外ではなく未加入である建設業者を下請として選定しない。等
- 現場に入場する作業員について保険加入の確認・指導等
- 新規入場者の受け入れに際して、作業員名簿の社会保険欄を確認し、未加入が発覚した場合には、作業員名簿を作成した下請に対し、作業員を適切な保険に加入するよう指導する。
- 適切な保険への加入が確認できない作業員について、特段の理由がない限り現場入場を認めない。
- 法定福利費の適正な確保
- 見積時から法定福利費を必要経費として適正に確保する。
下請の役割と責任
- 雇用する労働者の適切な社会保険への加入:労働者である社員と請負関係にある者の二者を明確に区別し、労働者である社員についての保険加入手続きを適切に行う、等
- 元請企業が行う指導等への協力
- 法定福利費の適正な確保:法定福利費を適正に見積り、法定福利費を内訳明治した見積書を注文者に提出する。
令和2年10月の改正法施行により、建設業者は社会保険の加入が義務となりましたが、これは無許可業者に対しても同様に取り扱うべきです。元請は、選定候補となる建設業を営む者が無許可業者であったとしても、社会保険未加入で建設業を営む者は下請として選定しないという取り扱いをすることが求められていくながれなので、選定しないようにしていくべきでしょう。