建設業許可に限らず、許認可を取った後に気になるのがやはり立入検査などで指導や処分を受けるリスクです。今回は建設業許可を取得した事業者に対しての検査がどのようなものか解説していきます。
立入検査とは?
立入検査とは、建設業法第31条第1項に基づいて、国土交通省の職員や都道府県の職員により行われる立入検査のことです。元請負人と下請負人との対等な関係の構築及び公正かつ透明な取引の実現等が主な目的として行われています。
(報告及び検査)
第三十一条 国土交通大臣は、建設業を営むすべての者に対して、都道府県知事は、当該都道府県の区域内で建設業を営む者に対して、特に必要があると認めるときは、その業務、財務若しくは工事施工の状況につき、必要な報告を徴し、又は当該職員をして営業所その他営業に関係のある場所に立入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 第二十六条の二十一第二項及び第三項の規定は、前項の規定により立入検査について準用する。
建設業法
立入検査は、新規に建設業許可を取得した建設業者や、過去に監督処分又は行政指導を受けた建設業者、「駆け込みホットライン」等の各種相談窓口に多く通報が寄せられる建設業者、下請取引等実勢調査において未回答又は不適正回答の多い建設業者、不正行為を繰り返し行っているおそれのある建設業者を中心に実施されています。
立入検査の頻度
立入検査はどのくらいの頻度で行われるか気になるところですが、頻度については明確にさだめられているわけではなく、定期的に実施されるものではありません。建設業法第31条第1項にも「特に必要があると認められるときは」と記載されているとおり、許可行政庁が必要と認める場合に実施されている状況です。
ちなみに、国土交通省は毎年度の立入検査の実施件数を公表しています。
2020年6月10日に公表された「令和元年度「建設業法遵守推進本部」の活動結果及び令和2年度の活動方針(https://www.mlit.go.jp/common/001351306.pdf)」によれば、建設業者に対する立入検査等の実施件数は令和元年度が598件で、平成30年度が734件となっています。令和2年3月末時点での国土交通大臣許可業者数は10,259件なので(「建設業許可業者数調査の結果について(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001341954.pdf)」より)、概ね10年~15年に1回ぐらいのペースで立入検査があると想定することが出来ます。
立入検査でチェックされる項目は?
立入検査は、元請負人と下請負人との対等な関係の構築及び公正かつ透明な取引の実現等が目的として行われていますので、主に契約関係書類がチェックされます。主に立入検査としてチェックされる項目を下に記載してみました。
①発注者との契約関係書類
- 契約書(追加・変更分を含む)
- 検査結果通知書等(完成日、検査日及び引渡日が確認できる書類)
- 工程表
- 施工体系図
- 施工体系台帳(添付書類、再下請負通知書を含む)
- 配置技術者に必要な資格を有することを証する書類(監理技術者資格者証、合格証等)
- 発注者からの入金が確認できる会計帳簿
下請負人との契約関係書類
- 見積関係書類(見積依頼書、見積書等)
- 契約書(注文書・請書の場合も含む。追加・変更分を含む。)
- 検査結果通知所等(完成日、検査日及び引渡日が確認できる書類)
- 下請負人からの請求書及び下請代金の支払日、支払金額等が確認できる会計帳簿
上述の通り、その作成自体が建設業法で義務付けられている書類を適切に作成して備えているかであったり、建設業法の規定(検査や支払いの期限等)適切に守られているかを確認できる書類がチェックされます。建設業法の規定が守られているかどうかを確認することが立入検査の主目的ですので、普段から建設業法を遵守して営業している建設業者であれば、立入検査が来る場合でも特に不安になる必要 はありません。